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2025/09/29

HPV陽性と診断されたら。パートナーの検査をすすめない理由──ガイドラインに基づいて

こんにちは。産婦人科医の錢瓊毓(せん けいいく)です。

最近、男性の友人に「彼女がハイリスクHPV陽性ってわかって、僕も検査を受けるべきだっていうんだけど、どうなのかな?」と相談されました。

HPV(ヒトパピローマウイルス)についてはさまざまな性のあり方の中で関係するテーマですが、今回は、「女性がハイリスクHPV陽性と診断されたとき、男性パートナーに検査を求めるべきか?」という、男女カップルのケースに焦点をあててお話しします。

健診や婦人科受診で「ハイリスクHPV陽性」と伝えられると、不安になるのは当然です。特に「パートナーからうつったのでは?」「彼にも検査してもらうべき?」と考える方も多いと思います。

けれど、日本産科婦人科学会や婦人科腫瘍学会のガイドラインでは、この段階でパートナーに検査を求めることは推奨されていません。

HPVとは?

本題に入る前に、基本的知識を押さえておきましょう。

HPVとは、ヒトパピローマウイルスの略です。性的接触を通じて感染するウイルスで、多くの人が一生に一度は感染する可能性があります。HPVは100種類以上のタイプ(型)がありますが、そのうち17種類が「ハイリスク型HPV」と呼ばれ、子宮頸がんの原因となる可能性があります。ハイリスク型HPVは、16、18、26、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、69、73、82型と定義されています。特に「16型」と「18型」という2つのタイプが、子宮頸がんの約70%の原因となっています。

「女性がハイリスクHPV陽性と診断された」ということは、「この感染が持続したら、将来、子宮頸がんになる可能性があります」という意味です。そして、子宮頸がんかどうかは、HPV検査ではなく、子宮頸部細胞診という検査で判断します。

HPV検査子宮頸部細胞診の二つの検査の目的の違いを一度頭の中に入れて、読み進めてください。

なぜパートナーの検査が推奨されないのか?

では本題です。
がんになるかもしれないウイルスなのに、なぜ男性パートナーの検査が推奨されないのでしょうか?
理由は、以下の3つです。

理由① HPVは非常にありふれたウイルス

  • 性交経験のある女性の約80%が生涯で感染するとされる
  • 多くの場合、一過性感染で、2年以内に自然排除される

日本産科婦人科学会も「HPV感染は極めて一般的なものであり、一過性感染の多さが特徴」と明記しています。

理由② 検査結果にかかわらず、治療方針は変わらない

  • HPVに対する治療薬は存在しない
  • パートナーが陽性でも陰性でも、女性側の対応(経過観察・検診)は同じ
  • 子宮頸がんはHPVの持続感染による細胞変化をモニターすることが重要

ガイドラインでは、HPV陽性=がんではなく、子宮頸部細胞診との併用で評価するよう示されています。

理由③ 男性への検査は医療的に確立されていない

  • 男性に対するHPV検査は診療ガイドラインに存在しない
  • 保険適用されておらず、対応している施設はごく限られる
  • 男性器の構造上、検出精度が低く、偽陰性のリスクが高い

そのため、婦人科領域の学会では「男性にHPV検査を行う意義は乏しい」とされ、臨床的にも一般的ではありません

本当に必要なことは?

HPV陽性とわかったときに大切なのは、パートナーの検査ではなく、
以下のことにしっかり取り組むことです:

  • 子宮頸部細胞診の定期受診(ガイドラインでは2年に1回が推奨)
  • 必要に応じたコルポスコピー・組織診
  • HPVワクチンの接種(年齢や既往に応じて)

最後にお伝えしたいこと

「パートナーの検査を急がなくても、あなたの健康はきちんと守れます。」

今は、自分の体にやさしく目を向けてあげる時期。
医学的にも、感情的にも、無駄な不安にエネルギーを使いすぎず、正しい情報で前向きな選択を重ねていきましょう。

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