
未来を守る手術の話_第1回...
2025/07/13
2025/07/13
20〜40代。
仕事、家庭、子育て、そして自分の人生――女性がさまざまな役割を担い、心も体もフル回転で生きているこの時期に、子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮内膜症といった婦人科の病気に悩む方は少なくありません。
「このまま様子を見ていていいのかな?」
「手術って、本当に必要?」
「将来の妊娠や体への影響は…?」
こうした不安や迷いに直面したとき、大切なのは、正しい情報をもとに、自分に合った選択肢を知ることです。
そして、手術という選択が「いまの症状」を改善するだけでなく、「未来のあなた」を守る手段にもなる――そんな視点から、この連載をお届けしたいと思っています。
私(芦屋ウィメンズクリニック院長:錢 鴻武(せん・こうぶ))は、
長年、婦人科の手術、特に腹腔鏡や子宮鏡を用いた低侵襲治療に携わってきました。
患者さん一人ひとりのライフステージや将来の希望に寄り添いながら、納得のいく医療を提供することを目指しています。
この連載では、手術が「怖いもの」ではなく、「未来の自分を守る選択肢」として前向きにとらえていただけるような情報をお届けしていきます。
まずは第1話から。
ある日、突然医師から「手術を提案」されるーー。
その瞬間、驚き、不安、恐怖…いろんな感情が一度に押し寄せて、頭が真っ白になってしまう。
そんな経験をされた方は、少なくないと思います。
実際、私はこれまでにたくさんの患者さんから、こんな声を聞いてきました。
「え、そんなに悪いの?」
「手術って、今すぐ必要なんですか?」
「妊娠に影響するって聞いて、余計に怖くなってしまいました…」
とくに、20代〜30代で卵巣嚢腫や子宮筋腫、子宮内膜症と診断された方は、
「まだ妊娠の予定はないけれど、いつかは子どもがほしい」と考えていることが多く、
治療の選択には、とても慎重になるのが自然な反応だと思います。
そんな“戸惑いの中にいる方”にこそ、伝えたいことがあります。
手術を提案されたとき、
「考える余裕もないまま、決めさせられる感じがした」
と話される方も少なくありません。
その焦りが、 不安や恐怖をさらに大きくしてしまうこともあります。
でも、私はいつもこう思います。
手術は、やり直しのきかない選択。
だからこそ、患者さん自身が納得して選ぶことが、何よりも大切です。
そのためには、“正しい情報”と“自分の気持ちや希望”の両方を並べて、じっくり考える時間が必要です。
「今すぐしないと取り返しがつかない」ケースばかりではありませんし、
場合によっては、“手術をしない”という選択肢も十分にありえます。
医師として、私は婦人科疾患に対する腹腔鏡手術に日々取り組んでいます。
けれど、手術は「ただの医療行為」ではなく、「人生の大きな選択」だと考えています。
だからこそ、術前から術後まで責任をもって向き合いたい。
納得のいくまで一緒に考えて、未来を守るための手術をしたい。
それが、私の診療スタイルです。
次回は、私が研修医時代に出会った、ある患者さんのことをお話しします。
手術は無事に終わりました。
けれど、その後、月経は再開せず、卵巣の機能が失われてしまいました。
なぜそんなことが起きたのか。
そして、その出来事が私に何を教えてくれたのか。
手術と向き合うとはどういうことか――
あらためて考えるきっかけになった体験です。
よろしければ、続きも読んでいただけたら嬉しく思います。
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錢 鴻武(産婦人科医/芦屋ウィメンズクリニック院長)
日本産科婦人科内視鏡学会 腹腔鏡・子宮鏡技術認定医
日本外科内視鏡学会 技術認定(産婦人科領域)
日本女性骨盤底医学会 専門医
「未来を守る医療」を信念に、子宮や卵巣の温存手術では機能の温存・回復にこだわった婦人科手術を専門に行う。
手術の技術だけでなく、術前の迷いや不安にも正面から向き合う診療スタイルが信条。
趣味はマラソン。走る医師として、サロマ湖ウルトラマラソンを10回完走し「サロマンブルー」の称号を得ている。
フルマラソン自己ベストは2時間53分、富士登山競走も2回頂上まで完走。