奇形腫との正しい向き合い方 | 芦屋ウィメンズクリニック | 芦屋市の婦人科
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その他の病気のこと

2025/11/23

奇形腫との正しい向き合い方

こんにちは。院長の錢 鴻武(せん・こうぶ)です。

卵巣嚢腫と診断されて、「とりあえず様子を見ましょう」と言われた。
そんな経験がある方、多いと思います。
でも、“どんな種類の嚢腫なのか” によって、未来のリスクはまったく違います。
ここでは特に奇形腫の場合について解説します。

「経過観察」でいい場合、そうでない場合

卵巣嚢腫と診断されると、「今は治療せず、経過を見ましょう」と言われることがしばしばあります。
その方針で問題のないケースが多いのですが、どんな種類の卵巣嚢腫なのかを、しっかり確認してください。

もしそれが「奇形腫(皮様嚢腫とも呼ばれます)」だった場合、
“経過観察” を続けるデメリットについて、一度立ち止まって考える必要があります。

奇形腫は良性が多い。でも“自然には消えない”

奇形腫の多くは、良性の卵巣腫瘍です。卵子のもとになる細胞から生まれるため、内部には脂肪や毛髪、皮膚などの成分が含まれていることがあります。少し驚かれるかもしれませんが、珍しいものではありません。
MRI検査などで悪性の可能性が低いことが確認できれば、慌てて手術する必要はありません。

ただし、奇形腫は自然に小さくなることはなく、年月とともに少しずつ大きくなることがあります。
たとえば今22歳で、30歳ごろに妊娠を考えるとしたら――
その8年間で奇形腫が大きくなってしまう可能性は十分にあります。

いざ妊娠を考えたとき、
「先に手術をしてから妊娠したほうがいいですね」
と言われるケースも少なくありません。
未来を見据えるなら、症状がないうちに手術を検討することが大切です。

見逃したくないリスク:卵巣嚢腫茎捻転

「妊娠の予定はないから、卵巣嚢腫が大きくなっても平気」
そう考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは少し違います。

卵巣は、親指ほどの大きさで骨盤内に “ぶら下がっている” 臓器。
そこに重みのある嚢腫がつくと、日常の動作――立つ、座る、走る――のたびに揺れが生じます。
その “揺れ” のはずみで、卵巣の根元がねじれることがある。
これが「卵巣嚢腫茎捻転(けいねんてん)」です。

特に、奇形腫は内容に脂肪を多く含むため、卵巣の周りを取り囲む腸管よりも比重が軽くなります。そのため、他の卵巣嚢腫に比べて、小腸の蠕動により嚢腫が持ち上がりやすく、捻転のリスクが他の嚢腫よりも高いとされています。

茎捻転が起こると、お腹に強い痛みが走ります。
歩けないほどの痛みで、緊急手術が必要になります。
放置すると、卵巣が壊死して卵巣ごと摘出せざるを得ないこともあります。

だからこそ、“落ち着いて手術を選べるうちに”

私はこれまで、茎捻転で突然救急搬送された患者さんを何人も診てきました。
そのたびに、「症状のないうちに、計画的に手術していれば」と感じます。
だからこそ、奇形腫を放置するメリットはない、といつも説明しています

小さいからまだ手術はしなくていいと言われていても、
自然に消えることはないことを考えると、
将来のために、奇形腫は早めに摘出しておくのが安心です。
来週すぐ手術、という話ではありません。
痛みのない今だからこそ、時間をかけて理解し、
心と体の準備を整えて手術を受けることができます。

手術は「卵巣を残す」ことを前提に

奇形腫の手術では、卵巣をできるだけ残すことが大切です。
嚢腫だけを取り除く「卵巣嚢腫摘出術」をおすすめします。

今は多くの病院で腹腔鏡手術が主流です。
傷が小さく、回復が早いという利点がありますが、
本当の強みはそこではありません。

腹腔鏡手術では、カメラで拡大しながら操作できるため、
開腹手術よりも繊細な手技が可能になります。
正常な卵巣の組織をできるだけ傷つけずに、嚢腫だけを取り除けるのです。

卵巣の機能を守り、将来の妊娠の可能性を残す――
この “繊細さ” が、何より重要です。
だからこそ、信頼できる医師を選ぶことを大切にしてください。

手術のあとは、「安心を続ける時間」を

手術後は、反対側の卵巣に新しい奇形腫ができることもあるため、
年に一度の超音波検査を続けることをおすすめします。
これは「病気を探すため」ではなく、「安心を保つための時間」です。

多くの方は、手術を終えて数か月後、
「早く決断してよかった」と言われます。
手術によって、痛みや不安から解放されるだけでなく、
“自分の体を守る力を取り戻す”という実感が生まれるからです。

未来のために、いま動く

奇形腫は、良性で、きちんと治療すれば安心できる病気です。
でも、「良性だから放っておいて大丈夫」と思ってしまうと、
ある日突然、体が悲鳴をあげることがあります。

だから私は、こう伝えています。
「未来のために、いま動く」。
これは、決して焦らせる言葉ではありません。
“今の自分を大切にする勇気” の表現です。

あなたの体は、あなたの人生そのもの。
穏やかな未来のために、今、静かに整えていきましょう。

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