【総集編】未来を守る手術の話 全5回まとめ...
2025/08/21
2025/11/23
こんにちは。院長の錢 鴻武(せん・こうぶ)です。

卵巣嚢腫と診断されて、「とりあえず様子を見ましょう」と言われた。
そんな経験がある方、多いと思います。
でも、“どんな種類の嚢腫なのか” によって、未来のリスクはまったく違います。
ここでは特に奇形腫の場合について解説します。
卵巣嚢腫と診断されると、「今は治療せず、経過を見ましょう」と言われることがしばしばあります。
その方針で問題のないケースが多いのですが、どんな種類の卵巣嚢腫なのかを、しっかり確認してください。
もしそれが「奇形腫(皮様嚢腫とも呼ばれます)」だった場合、
“経過観察” を続けるデメリットについて、一度立ち止まって考える必要があります。
奇形腫の多くは、良性の卵巣腫瘍です。卵子のもとになる細胞から生まれるため、内部には脂肪や毛髪、皮膚などの成分が含まれていることがあります。少し驚かれるかもしれませんが、珍しいものではありません。
MRI検査などで悪性の可能性が低いことが確認できれば、慌てて手術する必要はありません。
ただし、奇形腫は自然に小さくなることはなく、年月とともに少しずつ大きくなることがあります。
たとえば今22歳で、30歳ごろに妊娠を考えるとしたら――
その8年間で奇形腫が大きくなってしまう可能性は十分にあります。
いざ妊娠を考えたとき、
「先に手術をしてから妊娠したほうがいいですね」
と言われるケースも少なくありません。
未来を見据えるなら、症状がないうちに手術を検討することが大切です。
「妊娠の予定はないから、卵巣嚢腫が大きくなっても平気」
そう考える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは少し違います。
卵巣は、親指ほどの大きさで骨盤内に “ぶら下がっている” 臓器。
そこに重みのある嚢腫がつくと、日常の動作――立つ、座る、走る――のたびに揺れが生じます。
その “揺れ” のはずみで、卵巣の根元がねじれることがある。
これが「卵巣嚢腫茎捻転(けいねんてん)」です。
特に、奇形腫は内容に脂肪を多く含むため、卵巣の周りを取り囲む腸管よりも比重が軽くなります。そのため、他の卵巣嚢腫に比べて、小腸の蠕動により嚢腫が持ち上がりやすく、捻転のリスクが他の嚢腫よりも高いとされています。
茎捻転が起こると、お腹に強い痛みが走ります。
歩けないほどの痛みで、緊急手術が必要になります。
放置すると、卵巣が壊死して卵巣ごと摘出せざるを得ないこともあります。
私はこれまで、茎捻転で突然救急搬送された患者さんを何人も診てきました。
そのたびに、「症状のないうちに、計画的に手術していれば」と感じます。
だからこそ、奇形腫を放置するメリットはない、といつも説明しています。
小さいからまだ手術はしなくていいと言われていても、
自然に消えることはないことを考えると、
将来のために、奇形腫は早めに摘出しておくのが安心です。
来週すぐ手術、という話ではありません。
痛みのない今だからこそ、時間をかけて理解し、
心と体の準備を整えて手術を受けることができます。
奇形腫の手術では、卵巣をできるだけ残すことが大切です。
嚢腫だけを取り除く「卵巣嚢腫摘出術」をおすすめします。
今は多くの病院で腹腔鏡手術が主流です。
傷が小さく、回復が早いという利点がありますが、
本当の強みはそこではありません。
腹腔鏡手術では、カメラで拡大しながら操作できるため、
開腹手術よりも繊細な手技が可能になります。
正常な卵巣の組織をできるだけ傷つけずに、嚢腫だけを取り除けるのです。
卵巣の機能を守り、将来の妊娠の可能性を残す――
この “繊細さ” が、何より重要です。
だからこそ、信頼できる医師を選ぶことを大切にしてください。
手術後は、反対側の卵巣に新しい奇形腫ができることもあるため、
年に一度の超音波検査を続けることをおすすめします。
これは「病気を探すため」ではなく、「安心を保つための時間」です。
多くの方は、手術を終えて数か月後、
「早く決断してよかった」と言われます。
手術によって、痛みや不安から解放されるだけでなく、
“自分の体を守る力を取り戻す”という実感が生まれるからです。
奇形腫は、良性で、きちんと治療すれば安心できる病気です。
でも、「良性だから放っておいて大丈夫」と思ってしまうと、
ある日突然、体が悲鳴をあげることがあります。
だから私は、こう伝えています。
「未来のために、いま動く」。
これは、決して焦らせる言葉ではありません。
“今の自分を大切にする勇気” の表現です。
あなたの体は、あなたの人生そのもの。
穏やかな未来のために、今、静かに整えていきましょう。
