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手術のこと

2026/04/16

体験談じゃなく、“正解”が知りたいあなたへ_第6回 術後の性生活、妊娠について

こんにちは🌿
芦屋ウィメンズクリニックの
錢 鴻武(せん こうぶ)です。

「その情報は、あなたのための“正解”ですか?」

ネットには、手術を受けた方の体験談があふれています。
ときに心強く、ときに不安を強めてしまう――
その情報と、医療としての説明のあいだにある「距離」について、この連載では少し立ち止まって考えていきます。

連載
『体験談じゃなく、“正解”が知りたいあなたへ』

第6回のテーマは
「術後の性生活はいつから?月経はいつ再開する?妊娠はいつから?」

どれも大切なことなのに、
少し聞きにくくて、そのままになりやすいテーマです。

体験談ではさまざまな情報が見つかりますが、
かえって迷ってしまうことも少なくありません。

安心して次の一歩を考えるために。
どうぞお読みください。

術後の性生活はいつから?月経はいつ再開する?妊娠はいつから?

手術が終わって、少し落ち着いてきた頃。
多くの方が気になり始めるのが――

「性行為はいつから大丈夫?」
「生理はいつ戻る?」
「妊娠はいつから考えていいの?」

そんな“術後のその後”について、
術式ごとの違いや医学的な考え方をもとに、
これらの疑問をひとつずつ整理していきます。


性生活はいつから?

まず大前提として大切なのは、

「心身ともに、不安なく受け入れられる状態かどうか」

です。

そのうえで、医学的なポイントは
**「腟に傷があるかどうか」**で大きく変わります。

膣に傷がある手術(子宮全摘術・骨盤臓器脱など)

子宮全摘術では、腟の奥(腟断端)に傷ができます。
この部分が完全に治る前に性行為を行うと、

  • 物理的な力の負荷
  • 感染

によって、傷が開いてしまう(離開)リスクがあります。

そのため、医学的には
術後8〜12週間(およそ3か月)は控えるのが基本です。

実際、多くの施設が「術後3か月」と説明しているのは、
この治癒期間に基づいています。

また、骨盤臓器脱の手術も、
多くは腟に傷ができるため、同様の考え方になります。

膣に傷がない手術(筋腫核出術・卵巣・卵管手術など)

一方で、

  • 子宮筋腫核出術
  • 卵巣や卵管の手術

では、通常は腟に傷がありません。

そのため、性生活そのものに医学的な制限はありません。

ただし、注意点がひとつあります。

筋腫核出術後は「避妊」が必要

子宮筋腫核出術では、子宮に傷ができているため、
その傷が十分に治る前に妊娠すると、
子宮破裂のリスクがあります。

このため、一定期間の避妊が必要です。

目安は施設によって異なり、
3〜12か月と幅があります。

多くは6か月程度とされていますが、
「どの期間が最も優れているか」を示す明確なデータはありません。

私は3か月の避妊を目安にしています。

この期間中も、
避妊をしっかり行えば性生活自体は可能です。

例外:vNOTES手術

卵巣手術などでも、
**vNOTES(経腟内視鏡手術)**の場合は膣に傷ができます。

そのため、
術後は性生活を控える期間を設ける必要がります。
子宮を温存した場合は約3週間程度とされています。


月経はいつ再開する?

月経の再開時期は、
術前にホルモン治療をしていたかどうかで変わります。

GnRHアナログを使っていた場合

ホルモンを一時的に止める薬です。

  • 内服の場合:中止後 約1か月半で再開
    (薬の効果が切れて→排卵→約4週後に月経)
  • 注射の場合:最後の投与から
    早くて2か月半、遅いと3〜4か月程度

回数や卵巣機能によって個人差があります。

黄体ホルモンを使っていた場合

薬をやめると、
2〜4日以内に月経が来ることが多いです。

そのため、手術直後に生理が来ることもあります。

ホルモン治療をしていなかった場合

基本的には、これまでの周期通りに月経が来ます。

ただし、卵巣の手術を行った場合は、

・手術のタイミング(排卵前か後か)
・どちらの卵巣が排卵に関わっていたか

によって、
早まることもあれば、遅れることもあります。


妊娠はいつから考えていい?

これも手術内容によって考え方が異なります。

卵巣・卵管の手術

特に制限はありません。
体調が回復していれば、いつからでも可能です。

特に子宮内膜症の手術後は、
術後の方が妊娠しやすい環境になるため、
むしろ早めの妊娠を勧めることもあります。

時間が経つと、炎症の再燃や再発のリスクがあるためです。

子宮筋腫核出術

こちらは前述のとおり、
一定期間の避妊が必要です。

避妊期間は施設によって
”3~12か月”と幅があります。

多くの施設は6か月を推奨していますが、
私は3か月を目安としています。

なぜそのような違いがあるのでしょうか?

理由はシンプルで。
「何か月あければ安全か」を明確に示す研究は存在しないためです。

子宮の傷は、一般的に
6~12週(約3か月)で”かなりしっかり”した強度に回復し、
その後、半年~1年かけてさらに強度を増していきます。

一般的な創傷治癒のデータでは、

  • 12週で約70~80%
  • 6か月~1年で80~90%

まで回復するとされています。

つまり、
妊娠に耐えうる強度は3か月でかなり回復すると考えられます。

また、子宮破裂は0.5%~1%程度と非常にまれであり、
妊娠までの期間との明確な関連も示されていません。

子宮破裂の多くは妊娠後期に起こり、
妊娠中も組織の修復は進んでいくとされています。

そのため、
「待てば待つほど安全になる」とは言い切れないのが実情です。

妊娠を遅らせることのデメリット

一方で、妊娠を先延ばしにすることにもデメリットがあります。

年齢とともに妊娠率は低下し、流産率は上昇します。
そのため、必要以上に妊娠を遅らせることが、
必ずしも良いとは限らないこともあります。

私は基本的に3か月以上は避妊をおすすめしていますが、
不安が強い場合は6か月とする選択しもよいと思います。

摘出する筋腫の大きさや数、術後の経過によってんも変わるため、
最終的には主治医と相談しながら決めていくことが大切です。


まとめ

✔️ 性生活は「不安がないこと」が前提
✔️ 腟に傷がある手術では、約3か月は控える
✔️ 腟に傷がなければ、性生活自体に制限はない
✔️ 筋腫核出術後は一定期間の避妊が必要
✔️ 月経の再開は、術前のホルモン治療で変わる
✔️ 妊娠のタイミングは手術内容ごとに判断


少し聞きにくいテーマですが、
どれも「これからの生活」にとても大切なことです。

不安を抱えたままにせず、
正しい情報をもとに、安心して次の一歩を考えていきましょう。

次回は連載ラスト。
「体験談やネットの情報と、どう付き合えばいいの?」
不安になりすぎず、正しい情報を選ぶための“読み解き力”をお届けします。

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✍️ 著者プロフィール

錢 鴻武(産婦人科医/芦屋ウィメンズクリニック院長)
日本産科婦人科内視鏡学会 腹腔鏡・子宮鏡技術認定医
日本外科内視鏡学会 技術認定(産婦人科領域)
日本女性骨盤底医学会 専門医

「未来を守る医療」を信念に、子宮や卵巣の温存手術では機能の温存・回復にこだわった婦人科手術を専門に行う。
手術の技術だけでなく、術前の迷いや不安にも正面から向き合う診療スタイルが信条。
趣味はマラソン。走る医師として、サロマ湖ウルトラマラソンを10回完走し「サロマンブルー」の称号を得ている。フルマラソン自己ベストは2時間53分、富士登山競走も2回頂上まで完走。

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