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その他の病気のこと

2025/12/01

【連載 Vol.1】性感染症のなにがいけない?|クラミジアと淋菌

こんにちは。産婦人科医の錢 瓊毓(せん・けいいく)です。

突然ですが、性感染症の何がいけないのでしょうか?
病気にならないのが一番ですが、「罹ったって治療できるのだから、そんなに深刻に考えなくてもいいのでは?」——そう思ったことはありませんか。

一時的な症状だけで済むものなら、その考え方でも大きな問題はないかもしれません。でも、中には将来の妊娠や出産、そして人生全体の安心にまで影響する性感染症があります。

だからこそ、この連載では「性感染症」とひとまとめにせず、ひとつずつの病気について解説していきます。短期的な影響と長期的な影響の違いを知り、自分の未来をどのように守るのかを一緒に考えていきましょう。

第1回は、クラミジアと淋菌。
第2回は、梅毒とHIV。
第3回は、B型肝炎とC型肝炎。
第4回は、トリコモナス。
第5回は、ハイリスクHPV(ヒトパピローマウイルス)。
第6回は、マイコプラズマとウレアプラズマ。

全6回の連載となります。
では早速、第1回の本題に入りましょう!
日本で最も多い性感染症であるクラミジア感染症と淋菌感染症についてお話します。

クラミジア感染症

放置すると不妊や子宮外妊娠の原因に

クラミジア感染症は、日本で最も多い性感染症のひとつです。特に若い世代に多く、感染しても自覚症状がほとんどないことが特徴です。男性では排尿時の痛みや違和感、女性ではおりものの変化や下腹部痛が出ることもありますが、多くの場合は気づかないまま経過してしまいます。

問題は、この「気づかないまま」の期間にあります。女性では卵管炎や骨盤内炎症性疾患を起こし、結果的に卵管が狭窄(狭くなる)したり、閉塞(詰まる)したりして、不妊や子宮外妊娠の原因となることがあります。また、妊娠中にクラミジアに感染していると、出産時に赤ちゃんに感染し、赤ちゃんの結膜炎や肺炎を引き起こすこともあります。男性でも、副睾丸炎など将来の生殖機能に影響する可能性があります。

クラミジア感染症は抗菌薬で治療可能ですが、再感染も多く、治療後のパートナー間での検査・治療が欠かせません。何より重要なのは、「症状がなくても感染しているかもしれない」という認識です。

正しく知って、定期的に検査を受けることが、あなたの安心につながります。

淋菌感染症

放置すると不妊や妊娠合併症の原因に

淋菌感染症は、淋病とも呼ばれる性感染症で、クラミジアと並んで頻度の高い疾患です。原因菌は「淋菌」という細菌で、感染後2〜7日ほどの短い潜伏期間で症状が出やすいのが特徴です。

男性では排尿時の強い痛みや膿のような分泌物が典型的な症状です。一方で女性は無症状のことも多く、症状があってもおりものの増加や下腹部の不快感といった軽い変化にとどまり、気づかれないまま進行してしまうことも少なくありません。

放置すると、女性では卵管炎や骨盤内炎症性疾患を起こし、不妊や妊娠合併症(早産、低体重出生時などの原因になることがあります。男性でも副睾丸炎を起こし、将来の生殖機能に影響する可能性があります。

オーラルセックスをしている場合には、喉に感染することもあります。その場合には、長引く咳や喉の違和感が出ますが、全くの無症状で過ごすこともあります。喉に感染する分には、長期的な影響はありませんが、喉から性器へ、そしてまた性器へ、と結局は回りまわって冒頭に説明したとおり、女性では不妊の原因などへと発展するリスクがあります。

もう一つ大きな問題は、淋菌が近年「薬が効きにくくなる=耐性菌」を獲得している点です。治療は抗菌薬ですが、耐性菌の増加により治療が難しくなるケースも報告されています。よって、治療後は必ず治癒しているかどうかを確認するために再検査を受けてください。また、再感染も起こりやすく、パートナー双方の検査と治療が欠かせません。

一度治っても油断はできません。定期的な検査が未来を守る力になります。

未来のために

安心を積み重ねる習慣、性感染症検査をライフスタイルに

クラミジア感染症も淋菌感染症も、一時的な症状で終わる病気ではありません。素早く治療をしなれば、将来の妊娠や出産といった大切なライフイベントに影響を及ぼす可能性があります。

年に一度の性感染症検査をこれからのライフスタイルに取り入れてみませんか?この小さな習慣が、あなたの未来を守ります。あなたの健康と未来を守るのは、あなた自身です!

次回は、梅毒とHIVについて説明します。続きも読んでもらえると嬉しいです。


筆者紹介
錢 瓊毓(せん・けいいく) 産婦人科医/芦屋ウィメンズクリニック
HP:芦屋ウィメンズクリニック
日本産科婦人科学会 専門医
外資系コンサルティング会社勤務を経て、医学部へ進学し、産婦人科医となる。「知識は未来を変える」を信念に、産婦人科医の知識と知見が社会において最大限に活用されることを願っている。


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