【総集編】未来を守る手術の話 全5回まとめ...
2025/08/21
2025/12/22
こんにちは。産婦人科医の錢 瓊毓(せん・けいいく)です。

性感染症の何がいけないのでしょうか。病気にならないのが一番ですが、「罹ったって治療できるのだから、そんなに深刻に考えなくてもいいのでは?」——そう思ったことはありませんか。
一時的な症状だけで済むものなら、その考え方でも大きな問題はないかもしれません。でも、中には将来の妊娠や出産、そして人生全体の安心にまで影響する性感染症があります。
だからこそ、この連載では「性感染症」とひとまとめにせず、ひとつずつの病気について解説していきます。短期的な影響と長期的な影響の違いを知り、自分の未来をどのように守るのかを一緒に考えていきましょう。
第1回は、クラミジアと淋菌。
第2回は、梅毒とHIV。
第3回は、B型肝炎とC型肝炎。
第4回は、トリコモナス。
第5回は、ハイリスクHPV(ヒトパピローマウイルス)。
第6回は、マイコプラズマとウレアプラズマ感染症。
では早速、今回の主題であるトリコモナス感染症について話しましょう。
知名度低めだけど、不妊の原因になりえる怖い感染症
他の性感染症と比べると、トリコモナス感染症はやや知名度が低いかもしれません。
トリコモナス感染症は「トリコモナス原虫」という小さな寄生虫によって起こる性感染症です。細菌やウイルスではなく「原虫」が原因という点が特徴です。性行為以外でも感染することはありますが、性行為でも感染するので、性感染症のひとつとして認識しておくべき病気です。
女性では、おりものの量が増え、黄緑色で泡立つような性状になることがあります。また、かゆみや灼熱感、性交時の痛みが出ることもあります。ただし、感染が慢性化すると症状が緩和する傾向にあり、「なんとなく治った?」と自己判断すると危ないです。
男性の場合は多くが無症状で、感染していても気づかないままパートナーにうつしてしまうケースがあります。なので、彼は症状ないのに私だけ?と思ったときは、トリコモナス感染症を思い浮かべてください。
症状が軽い、あるいは全くない場合には、「たいしたことはない」と思われがちですが、放置すれば炎症が長引き、不妊の原因になったり、妊娠中に感染をすると、早産や低体重出生児のリスクにもなるので、特に女性の方は、トリコモナス感染症を決して軽視しないようにしてください。
治療は抗原虫薬で可能ですが、パートナーも一緒に治療することが重要です。症状がなくても感染している場合があるため、検査を受けることがもっとも確実な安心につながります。
小さな違和感でも大切なサインです。見逃さずに検査を受けて安心してください。
安心を積み重ねる習慣、性感染症検査をライフスタイルに
トリコモナス感染症は、感染が長引くと、不妊の原因になります。この事態を避けるために大事なのは、早く見つけて早く治療すること、です。
年に一度の性感染症検査をこれからのライフスタイルに取り入れてみませんか?この小さな習慣が、あなたの未来を大きく変えます。
次回は、ハイリスクHPVについて説明します。続きも読んでもらえると嬉しいです。
