
【総集編】未来を守る手術の話 全5回まとめ...
2025/08/21
2025/10/19
こんにちは。産婦人科医の錢 瓊毓(せん・けいいく)です。
健康診断のオプションに「腫瘍マーカー検査」という項目を見たことがある方も多いと思います。「がんの早期発見につながるなら受けておきたい」と感じるのは自然なことですよね。けれども実は、腫瘍マーカーは “がんのスクリーニング(早期発見目的の検査)” としての有用性は証明されていません。
たとえるなら――金属探知機で落としたピアスを探そうとしているのに、周囲のネジや小銭にばかり反応してしまうようなものです。
本当に探したい「がん」を見つけるどころか、関係のない数値の上昇に反応して「何かあるのでは」と不安をあおってしまうことが多いのです。
こうした話をすると、人間ドック施設を批判しているように聞こえるかもしれませんが、私の意図はそこにはありません。
むしろ、この記事を読んでくださっているみなさんに、「賢い医療の受け手」になっていただきたいという気持ちで書いています。
私は仕事柄、「人間ドックでCA125(腫瘍マーカーのひとつ)が少し高かったので、卵巣がんが心配です」と不安な表情で受診される方によくお会いします。そのたびに感じるのは、この検査は人の幸せに寄与していないということです。
今日は、なぜそう言えるのか――「腫瘍マーカーを健康診断で調べることの限界」についてお話ししたいと思います。
腫瘍マーカーとは、がん細胞が作り出す物質や、がんによって体内で増える成分を血液で調べる検査です。
名前からすると「がんがあれば上がる」ように感じますが、実際にはがんだけに反応するわけではありません。
たとえば、良性の腫瘍、炎症、肝臓や卵巣の良性疾患、喫煙、さらには年齢などによっても上昇することがあります。
つまり、数値が高くても「がんがある」とは限らないのです。
逆に、がんがあっても腫瘍マーカーが正常のままというケースも少なくありません。特に早期のがんではマーカーがまだ上昇していないことが多く、「異常なし=安心」でもないのです。
健康な人を対象に病気の可能性を探すスクリーニング検査では、
の両方が求められます。
けれども腫瘍マーカーはこの両方が十分でないため、がんを見逃す(偽陰性)ことも、がんがない人を不安にさせる(偽陽性)ことも多くあります。
その結果、「がんかもしれない」と心配になり、必要以上の検査を受けたり、不安を抱えたまま過ごしてしまうことも少なくありません。
世界中でさまざまな研究が行われていますが、腫瘍マーカーを健康な人に行っても、がんによる死亡率を下げる効果は認められていません。
つまり、「早期発見につながる」「命を救う」という意味では、科学的に有用性が証明されていないのです。
とはいえ、腫瘍マーカー自体が「無意味な検査」というわけではありません。
すでにがんと診断された方にとっては、
といった重要な役割を果たします。
「がんを見つける検査」ではなく、「がんの経過を追う検査」として活用されるべきものなのです。
実はこの話は、私が医学生であったころには既に授業で口酸っぱく教えられた内容です。医学の常識であり、この20年、この常識を覆す研究は出てきていません。しかし、実社会ではこの常識に反した運用がなされている点が残念でなりません。
がんを早く見つけるには、腫瘍マーカーではなく、科学的に効果が証明されている検診(子宮頸がん、乳がん、大腸がんなど)を定期的に受けることが最も確実です。
腫瘍マーカーの数値に一喜一憂するよりも、「意味のある検査を正しい方法で受ける」ことが、あなたの健康を守る一番の近道です。ぜひ、この点を念頭に入れて、ご自身のケアのための検診を組み立ててください。
もしすでに腫瘍マーカーを受けてしまって、数値が少し高いと言われ、不安な気持ちでいる方もいるかもしれません。
そんなときは、焦って自己判断をせず、婦人科で適切な評価を受けることが大切です。
腫瘍マーカーの値だけでは、がんかどうかは判断できません。
エコー検査や必要に応じた画像検査などを組み合わせて、実際の状態を丁寧に確認する必要があります。
もし「どこで相談したらいいかわからない」と迷っている方がいたら、芦屋ウィメンズクリニックへいらしてください。
不安を抱えたまま一人で悩まず、必要な検査と安心できる説明を受けてほしいと思います。
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