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2025/03/08
2025/03/12
こんにちは。産婦人科医の錢瓊毓(せん けいいく)です。ここ数年、日本で梅毒の感染者が急増していることをご存じでしょうか? 特に20代、30代の女性の感染が増えており、決して他人事ではありません。 今回は、国立感染症研究所の最新データをもとに、梅毒の現状や健康への影響、妊娠リスクについて詳しく解説します。
国立感染症研究所の報告(日本の梅毒症例の動向について (2025年1月7日現在))1によると、2024年の梅毒の年間届出数は14,663例と、前年の13,258例を上回り、増加傾向が続いています。10年前と比べると感染者は約12倍となっています2。
特に女性の感染者数が顕著に増加しており、2024年には20代の女性が最も多く報告されています。異性間の性的接触による感染が主な要因とされています。男性は全年代において感染者が報告されています。自分のパートナーが、と想像したくないとは思いますが、性感染症の連鎖は私たちの想像を超える規模であることを踏まえると、どの人も梅毒感染している可能性がある、という想定で行動をすべきです。
梅毒の報告数:性別年齢分布
(出典:国立感染症研究所「日本の梅毒症例の動向について (2025年1月7日現在)」)
第1四半期:第1週~13週 第2四半期:第14週~26週 第3四半期:第27週~39週 第4四半期:第40週~52週
梅毒の症状は、感染の進行段階によって異なります。
第一期(感染後3週間程度):
第二期(感染後数カ月):
潜伏期:
第三期(数年〜十数年後):
梅毒は妊娠中に胎児へ感染する可能性があり、先天性梅毒のリスクを高めます。
先天性梅毒の報告数は、2019年から2022年にかけて年間20例前後で推移していましたが、2023年、2024年は30例以上と急増しています。
妊娠中に梅毒が見つかった場合、適切な治療を受けることで胎児への影響を最小限に抑えることができます。 そのためにも、妊娠を考えている方、またはすでに妊娠中の方は、定期的な検査を受けることが大切です。検査は血液検査で、結果も数日で出ますので、ぜひ検査を受けてください。
国立感染症研究所の報告では、梅毒感染者の職業や感染経路についての詳細な分析が行われていますが、「女性感染者の多くが性風俗業に従事している」という明確な結論は示されていません。一方で、厚生労働省の「性感染症報告数および罹患率の推移」に関する資料や、地方自治体の保健所が実施した調査報告書などでは、性風俗業従事者の梅毒感染率が高い傾向が報告されています。
では、梅毒は、性風俗業に関与していない人には無関係な病気なのでしょうか? 答えは「いいえ」です。確かに、性風俗業に従事している場合、感染リスクが高くなる可能性があります。しかし、梅毒は性的接触によって広がるため、特定の職業に限らず、誰でも感染する可能性があります。
実際に、近年は性風俗業に従事していない一般の女性の感染が増えていることが指摘されており、特に20代女性の感染が目立っています。これは、梅毒が特定の職業層だけでなく、より幅広い層に広がっていることを示しています。
そのため、「自分には関係ない」と思わず、誰もが梅毒の予防と早期検査を意識することが大切です。梅毒は早期に発見し、適切に治療すれば完治する病気です。気になる症状がある場合や、不安を感じる場合は、医療機関で検査を受けることをおすすめします。
梅毒は適切な予防と早期発見・治療が可能な病気です。
梅毒は「昔の病気」と思われがちですが、現代の日本でも確実に広がっています。 少しでもリスクを減らすために、正しい知識を持ち、予防・検査を心がけましょう。
芦屋ウィメンズクリニックでも梅毒を含めた性感染症検査を実施しておりますので、不安がある方はお気軽にご相談ください。