子宮鏡手術について知っておきたいこと...
2024/11/17
2024/11/20
こんにちは!医師の錢瓊毓(せん けいいく)です。
当院の空間設計において、診察室は、患者の不安や負担を軽減し、より安心して診療を受けられる空間になることを心がけました。今日はその中でも特に、内診の環境についてお話をしたいと思います。
日本のよくある婦人科診察室では、内診時に医師と患者の間にカーテンを設けています。皆さんは、この設計について疑問を持ったことはありませんか?私個人の体験ですが、人生で初めて婦人科の診察を受けたとき、実は驚きました。なぜ裸の下半身をカーテンの向こうに突き出して、誰がいるのかよくわからない(でも気配は感じる)中で診察を受けるの?カーテン越しにカチャカチャと器具の音や医師・看護師の声が聞こえるけど、何をしているのかはよく分からない環境は、とても不安でした。どうしてこんな設計になっているのか、よく理解できず、すこし戸惑いました。
後々、医学部に入った後に複数の産婦人科医に質問をしたら、「内診時に医師と患者の間にカーテンを設けることで、患者さんのプライバシーを保護する。患者さんの羞恥心に配慮している。」と言われたのですが、納得の行く説明とは言えず、はてなマークが止まりませんでした。どんなプライバシーを保護しているの???むしろカーテンが羞恥心を増すのでは???と。
カーテンで見えない診察室の裏側を、内診中にスタッフが行き来することもしばしばあり、患者さんのプライバシーをむしろ侵害していると感じました。
そして、産婦人科医になった後もこの疑問が消えることはなく、むしろ診療を続けていると、カーテンが医師と患者のコミュニケーションの障害になっていると感じるようになりました。なぜなら、カーテンで患者さんと医師が隔てられていることで、患者さんは不安を感じた際にすぐに医師に伝えられず、医師もそれを察することができません。医師の姿が見えないので、医師が行おうとしている検査や診察についての意図がうまく伝わらなかったり、誤解されたりする可能性もあり、それが患者さんの不安を増幅させるとも思います。少なくとも医学的な観点からは、カーテンを挟んだ診察が患者さんの利益になることはないでしょう。どちらかというと医療者サイドの都合で、カーテンが設置され始めたとも聞きます。
実際、昔の多くの病院はカーテンの向こう側がバックヤードやスタッフの通路になっているため、カーテンを開けると裏側の雑多な風景が患者さんの目に映ってしまいます。それでも、診察時に「カーテンを開けたままでいいですか?」と患者さんご自身がおっしゃる場合もありましたが、そのときは、「もちろんです」と喜んでカーテンを開けていました。雑多なバックヤードが見えても患者さんは困りませんからね。
診察室にカーテンを設置していないクリニックで働いたこともありますが、やはりそのほうが良いなと感じました。カーテンがないかわりに、内診の時には下半身をタオルやシート状のもので覆います。腰から膝にかけて、タオルがかかっているイメージですね。診察中の対話は、カーテン越しよりもコミュニケーションの質が高まります。患者さんから目線を合わせることもできるので、患者さんにとっても質問するハードルが下がると感じます。
医学的な観点からも、患者さんと対話して反応を見ながら内診や触診を行うことで、痛みや違和感を感じている部位をより正確に同定し、正しい診断が行えます。
また、診察の過程を患者さんに理解していただけるよう、必要に応じて器具を見せて説明を行い、信頼関係を築きながら診療を進めることができます。綿棒ひとつでも、「今からこれで子宮の入り口を少し触りますね」とモノを見せながら次のステップへ進むことが大事です。超音波検査でも、画面を指差しながらその場で説明することができます。医師と患者の間にカーテンを設けないことで、診察のプロセスがより透明でオープンなものとなり、患者さんが診察に対して理解を深めることができると考えています。
以上の考えから、当院では、診察台にカーテンを設置していません(写真参照:診察時は調光ができるダウンライトを使用しているので、写真よりは薄暗い環境にすることで、羞恥心に配慮しています)。なお、診察室は完全個室となっているので、診察中に診察に関係ない人間が出入りすることはなく、プライバシーは守られます。
カーテンのある診察スタイルに慣れている方は、「カーテンがないの?」と最初はとまどいを感じるかもしれません。でも、私たちの考える「カーテンのないメリット」をもう一度思い浮かべて、カーテンのない環境で診察を受けてみてください。きっとその良さを分かってもらえると信じています。
あと、内診台についてです。ウィーンと勝手に太ももを開かされるタイプが多いですが、どう感じますか?私は、すこし苦手です。患者さんの体格によっては、かなり無理な姿勢になることもあり、そのために余計な痛みや不安を感じることもあるでしょう。患者さんが自分の意思で診察に必要な姿勢を取る方が、力の抜けた自然な状態で診察ができると感じています。なので、診察台は冒頭の写真に写っているものを採用しています。診察台に座った後に、患者さん自身が楽な角度に膝を曲げていただき、そのあと診察台の足の部分が左右に開きます。
また、診察台は平らなベッドにもできるので、仰向けに脚を開くことが苦手な方は、横向きになって超音波検査を受けることもできます。
当院では、このような診察室の設計により、患者さんの不安を取り除き、よりリラックスして診察を受けられることを目指しています。
以上、少し熱く内診の環境について語りました。最後まで読んでくれて、ありがとうございます!