体験談じゃなく、”正解”が知りたいあなたへ_第4回 術後のお風呂・シャワー・入...
2026/03/19
2026/03/19
こんにちは🌿
芦屋ウィメンズクリニックの
錢 鴻武(せん こうぶ)です。
「その情報は、あなたのための“正解”ですか?」
ネットには、手術を受けた方の体験談があふれています。
ときに心強く、ときに不安を強めてしまう――
その情報と、医療としての説明のあいだにある「距離」について、この連載では少し立ち止まって考えていきます。
連載『体験談じゃなく、“正解”が知りたいあなたへ』
第4回のテーマは
「手術のあと、お風呂はいつから? 入院は何日?」
「お風呂は1か月ダメ?」
「傷が濡れると危ない?」
「入院はどれくらい必要?」
体験談では、いろいろな話が出てきます。
今回は、術後の入浴と入院日数について
現在の医学的な考え方をもとに、
分かりやすく整理してみたいと思います。
手術が終わったあと、よく聞かれる質問のひとつが
「お風呂はいつから入っていいんですか?」です。
そして、同じくらい多いのが
「入院は何日くらい必要ですか?」という質問。
ネットや体験談を見ていると、
「2泊3日だった」
「1週間も入院した」
など、さまざまな話が出てきます。
自分の場合はどのくらい必要なのだろう?
と迷ってしまいますよね。
患者さんの感覚からすると、
「入浴できる」=生活を取り戻し始めていいサイン
「退院する」=医師が「もう大丈夫」と判断した証
どちらも、安心して次の一歩に進んでいいという合図のように感じられるものです。
だからこそ、そのタイミングはとても大切だと感じています。
では実際には、医学的にはどう考えられているのでしょうか。
腹腔鏡手術では、お腹の傷はとても小さく、
5mm〜2cm程度の傷が数か所です。
傷の閉じ方も工夫されていて、
医療用テープや体内で溶ける糸を使っており、
表皮は2日ほどで閉じているため、
基本的には水に濡れても問題ありません。
痛みは軽いので、日常生活にもすぐに戻れます。
医学的に、退院の判断はとてもシンプルです。
これらがクリアできていれば、
医学的には退院可能です。
つまり、術後1日目でも、
体調が安定していれば帰宅できます。
私は、今の医学に合わせて管理を見直しています。
術後の体調が安定していれば、
翌日からシャワーも湯船もOKとしています。
これは「特別に頑張っている」というより、
医学的に問題ないと判断しているからこその方針です。
もちろん、体調が優れないときや発熱がある場合は様子を見ますが、
基本は
「無理のない範囲で、いつもの生活に戻っていく」
という考え方です。
過度な安静は、筋力や体力を奪ってしまいます。
いざ動こうと思ったときに、思うように体が動かないこともあります。
ある程度の活動性を保ちながら、
少しずつ日常生活へ戻る。
それが私のスタンスです。
シャワーも湯船も、注意点はシンプルです。
体調に合わせて無理をしないこと。
それさえ守れば、
翌日からの入浴はむしろ回復の助けになります。
ただ、ここでよく聞かれるのが
「1か月は湯船につかってはいけないと言われました」
という話です。
実際、このように指導している施設は少なくありません。
しかし、現在の医学的なエビデンスを見ると、
腹腔鏡手術だけでなく、開腹手術であっても
術後の入浴を長期間禁止する明確な根拠は示されていません。
創部がきちんと閉じていれば、
水に触れること自体が感染の原因になるわけでも、治りを遅らせるわけでもありません。
医学は進歩しています。
けれど、医療の習慣はすぐには変わらないこともあります。
そのため私は、
退院後はシャワーだけでなく湯船も可能と説明しています。
もちろん体調がすぐれないときや発熱がある場合は控えますが、
体が温まり、リラックスできる入浴は
むしろ回復を助けることも多いと感じています。
体調の安定を確認し、
ご本人も「帰って大丈夫」と感じられれば、
術後2日目〜3日目に退院される方がほとんどです。
手術翌日に退院される方も年に数人います。
「早く家に帰りたい」
「自宅でゆっくり休みたい」
そんなお気持ちにも寄り添えるよう、
患者さん本位の退院スケジュールを大切にしています。
もちろん、慎重に経過を見るべきケースもあります。
ただ、医学的に安定していても入院が長くなる場合、
理由は患者さんの体調というよりも
・病院の運用方針
・担当医の判断基準
・「もう少し休んでから帰りたい」というご本人の希望
などによることも少なくありません。
医療に「正解」は一つではありません
それぞれの病院や医師の方針があり、
患者さんの安心感も大切な要素です。
私は常に、
医学的な安全性
そして
患者さん自身の納得感
その両方を大切にしています。
そのバランスの中で、
それぞれの患者さんにとっての「ちょうどよい回復」を考えています。
✔️ 術後翌日からシャワー・湯船ともにOK
✔️ 退院は「出血・歩行・飲食・痛み」が整えば可能
✔️ 実際は術後2〜3日で退院される方が多数
✔️ 大切なのは「長く入院すること」ではなく、その人に合った退院タイミング
次回は、患者さんから本当によく聞かれる質問集から――
「重いものを持っていい?」
「自転車に乗れる?」
「旅行はいつから?」
術後の“動き方”について、Q&A形式でお届けします。
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錢 鴻武(産婦人科医/芦屋ウィメンズクリニック院長)
日本産科婦人科内視鏡学会 腹腔鏡・子宮鏡技術認定医
日本外科内視鏡学会 技術認定(産婦人科領域)
日本女性骨盤底医学会 専門医
「未来を守る医療」を信念に、子宮や卵巣の温存手術では機能の温存・回復にこだわった婦人科手術を専門に行う。