未来を守る手術の話_第3回 | 手術を受けたら、妊娠できなくなるの? - 腹腔鏡下卵巣嚢腫摘出術
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手術のこと

2025/07/31

未来を守る手術の話_第3回

こんにちは
芦屋ウィメンズクリニックの錢 鴻武(せん こうぶ)です。

「その手術は、“今”のため? それとも“未来”のため?」

連載『未来を守る手術の話』、
第3話は「手術を受けたら、妊娠できなくなるの?」という、診察室でもたびたび寄せられるご質問をテーマにお届けします。

いまは妊娠の予定がなくても、将来子どもを望むかもしれない――。
そんな不安や迷いを抱える方にこそ、知っておいてほしい「卵巣嚢腫手術と妊娠力のリアル」。

“病変をどう取るか”ではなく、 “どこまで残せるか”という視点で、
あなたの未来を一緒に守るために。

どうぞお読みください。

(第1話 「手術って、そんなにすぐ決めないといけないの?」
(第2話 「無事に終えた手術” でも、未来が変わってしまった女性の話」

「手術を受けたら、妊娠できなくなるの?」

「先生、手術をしたら……妊娠できなくなったりしませんか?」

診察室で何度も耳にしてきた質問です。
そして私は、その質問の奥にある“こわさ”も、ずっと感じてきました。

✔︎ 手術を受けると、卵巣の機能が下がってしまうんじゃないか
✔︎ 将来、子どもを望んだときに後悔するんじゃないか
✔︎ 今はまだ妊娠の予定がないけれど、いつかは子どもを授かりたい

そんな気持ちを抱えて、「このまま手術を受けていいのだろうか?」と迷うのは、決して特別なことではありません。
むしろ、とても自然で、そしてとても大切な感情です。

卵巣嚢腫の手術は、ただ「取り除く手術」ではありません

卵巣嚢腫は、若い女性にも多い病気です。
生殖年齢女性の約1割弱に見られるといわれ、毎年たくさんの方が手術を受けています。

なかでも頻度が高いのは、
チョコレート嚢腫(子宮内膜症性嚢胞)、
皮様嚢腫(卵巣奇形腫)、
漿液性腺腫 
などです。

それぞれの病気の成り立ちや性質が異なるため、
手術をするかどうか、どんな方法をとるかは、人それぞれ異なります。

疾患の特性と手術適応を正しく理解し、疾患の種類に応じた手術方法を適切に選択・工夫する必要があります。
「とにかく手術すればよい」「取り除ければそれでいい」というものでは決してありません。
「5cmを超えたら手術」「それ以下なら経過観察」といった判断を耳にすることもありますが、これは一律には言えません。

本当に大切なのは、その人の年齢や症状、今後の希望も含めたうえで、手術が必要かどうかを見極めること。

そして、もし手術が必要なら――
どこまで病変を取り、どこまで卵巣を残すか。
その見極めが、将来の妊娠の可能性にも影響します。

「どこまで取るか」ではなく、「どこまで残すか」

卵巣嚢腫の手術は、卵巣機能に少なからず影響を与える可能性があります。
だからこそ大切なのは、病変を取り除くだけでなく、正常な卵巣組織をいかに傷つけずに残すか。

この“残し方”が、将来の卵巣機能、つまり卵巣予備能に大きく関わってきます。

とくにチョコレート嚢腫の場合は、術後に卵巣機能が低下することも少なくありません。
なかでも両側に病変があるケースでは、

  • いつ、どのような手術をするか
  • どの程度まで正常な組織を残せるか

といった判断が非常に重要になります。
そして、それを実現するには、技術だけでなく、細やかな配慮と工夫が求められます。

卵巣機能を守るために、私は腹腔鏡手術を選びます

私は、卵巣の大切な働きをできるだけ温存するために、腹腔鏡(ふくくうきょう)による手術を行っています。

腹腔鏡手術では、カメラで患部を大きく拡大して見ることができるため、
細かい血管や組織も、繊細に確認しながら操作できます。
その結果、正常な卵巣組織をできるだけ傷つけずに手術を行うことができます。

特にチョコレート嚢腫の場合は、
病変と正常組織の境目が非常に分かりづらく、切除の判断や手技の難易度は高くなります。

だから私はいつも、
「ここは残そう」「ここは取ろう」と、
ミリ単位で慎重に見極めながら手術にあたっています。

手術の成否は技術だけでなく、
その人の未来をどれだけ想像できるか――その“哲学”も問われるのだと思っています。

 よくあるご質問にお答えします

Q:手術を受けたら、すぐ妊娠したほうがいいですか?
A:いいえ、必ずしもすぐ妊娠する必要はありません。
 ただし、子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢腫)は再発しやすいため、妊娠を考えるまでの間は、再発予防の治療を続けていくことが望ましいです。
また、卵巣機能は年齢とともに少しずつ下がっていきます。
いまの年齢やライフプランに合わせて、“いま”できる準備を一緒に考えましょう。

Q:手術を受けると、卵子が減るんですか?
A:卵巣の一部を切除したり、熱による止血などで正常な組織が傷つくと、卵子の数(卵巣予備能)に影響が出る場合があります。

だからこそ、「病変を取るだけ」の手術ではなく、“どう守るか”を考えた手術が必要です。

 あなたの未来を、いっしょに守りたい

私が手術で一番大事にしているのは、
妊娠したくなったときに、その選択肢が残っていること

もちろん、妊娠が人生のすべてではありません。
でも、「その可能性を失わない」ことは、女性の人生に安心や希望をもたらしてくれると、
私は信じています。

迷っても、怖くても大丈夫です。
いま抱えている不安を、どうかそのまま聞かせてください。

あなたの未来を守る選択を、一緒に考えていきましょう。

次回予告:「病院よりも、“誰が手術するか”が未来を決める?」

〜執刀医を選ぶという新しい視点〜

同じ病院、同じ診断、同じ手術名――
それでも、“誰が執刀するか”で結果が変わることがあるとしたら?
次回は、「医師を選ぶ」という文化について、お話しします。

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✍️ 著者プロフィール

錢 鴻武(産婦人科医/芦屋ウィメンズクリニック院長)
日本産科婦人科内視鏡学会 腹腔鏡・子宮鏡技術認定医
日本外科内視鏡学会 技術認定(産婦人科領域)
日本女性骨盤底医学会 専門医

「未来を守る医療」を信念に、子宮や卵巣の温存手術では機能の温存・回復にこだわった婦人科手術を専門に行う。
手術の技術だけでなく、術前の迷いや不安にも正面から向き合う診療スタイルが信条。
趣味はマラソン。走る医師として、サロマ湖ウルトラマラソンを10回完走し「サロマンブルー」の称号を得ている。フルマラソン自己ベストは2時間53分、富士登山競走も2回頂上まで完走。

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