【連載 Vol.3】性感染症のなにがいけない？｜B型肝炎とC型肝炎

こんにちは。産婦人科医の錢 瓊毓（せん・けいいく）です。

性感染症の何がいけないのでしょうか。病気にならないのが一番ですが、「罹ったって治療できるのだから、そんなに深刻に考えなくてもいいのでは？」——そう思ったことはありませんか。

一時的な症状だけで済むものなら、その考え方でも大きな問題はないかもしれません。でも、中には将来の妊娠や出産、そして人生全体の安心にまで影響する性感染症があります。

だからこそ、この連載では「性感染症」とひとまとめにせず、ひとつずつの病気について解説していきます。短期的な影響と長期的な影響の違いを知り、自分の未来をどのように守るのかを一緒に考えていきましょう。

第１回は、クラミジアと淋菌。
第２回は、梅毒とHIV。
第３回は、B型肝炎とC型肝炎。
第４回は、トリコモナス。
第５回は、ハイリスクHPV（ヒトパピローマウイルス）。
第６回は、マイコプラズマとウレアプラズマ感染症。

では早速、第３回の本題に入りましょう！

B型肝炎

慢性化すると肝がんに

B型肝炎は「B型肝炎ウイルス（HBV）」によって起こる感染症です。血液や体液を介して感染し、性行為も主要な感染経路のひとつです。

感染すると、まずは急性肝炎として発症し、発熱や全身のだるさ、黄疸などが現れることがあります。多くの場合は自然に回復しますが、一部ではウイルスが体内に残り「慢性肝炎」となることがあります。

慢性化したB型肝炎は、長い年月をかけて肝硬変や肝がんに進展するリスクがあります。つまり、一度の感染が「生涯にわたって向き合う疾患」につながる可能性があるのです。妊娠中の母親が感染している場合には、出産時に赤ちゃんに感染が及ぶこともあるので、赤ちゃんに感染しないための対策を取る必要があります。

現在は、ワクチンによる予防、抗ウイルス薬による治療が可能です。ですが「感染しているかどうかを知ること」が何よりも大切です。症状がなくても、検査によって自分と家族の未来を守ることができます。

一度きりではなく、これからのライフスタイルの一部に検査をしてくださいね。

C型肝炎

完治できる病気になりました

C型肝炎は「C型肝炎ウイルス（HCV）」によって起こる感染症で、血液を介して感染します。かつては輸血や医療行為による感染が多くありましたが、現在は性行為を通じた感染も報告されています。

C型肝炎の特徴は、感染しても急性期には症状がほとんど出ないことです。そのため気づかないまま慢性化し、年月をかけて肝硬変や肝がんへと進展することがあります。実際、肝がんの大きな原因のひとつがC型肝炎です。

かつては治療が難しい病気とされてきましたが、現在は「飲み薬による治療（DAA）」によって、ほとんどのケースでウイルスを排除できるようになりました。治療の進歩はめざましいですが、それでも「感染しているかどうかを早く知る」ことが前提です。無症状のまま進行する病気だからこそ、検査が欠かせません。

未来の安心を守るために、検査を習慣にしていきましょう。

未来のために

安心を積み重ねる習慣、性感染症検査をライフスタイルに

B型肝炎もC型肝炎も、感染が長期化すると肝硬変や肝がんへと発展する可能性が高い病気です。肝硬変や肝がんは命を落とす可能性のある病気です。侮ってはいけません。

一方で、どちらの感染症も、早く見つけて治療をすれば、最悪の事態を避けられる可能性が高いです。また、Ｃ型肝炎は、医学の進歩により、完治を期待できる病気になりました。大事なのは、早く見つけて早く治療することです。

年に一度の性感染症検査をこれからのライフスタイルに取り入れてみませんか？この小さな習慣が、あなたの未来を大きく変えます。

次回は、トリコモナスについて説明します。続きも読んでもらえると嬉しいです。